ストレッチの効果といえば「体が柔らかくなる」ことです。
体が柔らかくなることで姿勢が良くなったり、肩コリが改善されたりするのでストレッチは効果的だといえます。
しかし、ストレッチの効果を感じられない人にとっては、本当に効果があるのか疑問が残ります。
あなたはストレッチをしても効果を感じられていないので「ストレッチに効果がある」といわれても納得できないのかもしれません。
そこで、ストレッチの効果について疑問があるあなたに、ストレッチの5つの効果について詳しく解説していきます。
この記事の後半では、整骨院の先生である私が教えるストレッチの方法もお伝えしているので、その方法通りにストレッチを行えば効果を感じられるでしょう。
目次
ストレッチで筋肉を伸ばすだけでは柔らかくならない3つの理由
ストレッチは主に体を柔らかくする効果がありますが、筋肉をジッと伸ばしているだけでは柔らかくならない可能性があります。
なぜなら、体が硬いのは3つの要素があるからです。
単に筋肉が硬いだけならストレッチをすれば柔らかくなりますが、それ以外に問題があればストレッチの効果が薄くなってしまうでしょう。
基本的には筋肉(軟部組織)の硬さが原因
体の硬さはまず筋肉や腱(軟部組織)が硬いことが考えられます。
軟部組織は臓器や骨を除いた全ての組織のことです。
一般的にみなさんが想像する「筋肉が硬い」ことだと想像して頂ければわかりやすいでしょう。
そもそもの組織が硬いので、体が硬くなってしまっているのです。
このような人は比較的ストレッチをしていれば、体が柔らかくなると考えられます。
関節の硬さも重要
次に、筋肉が硬いことで関節自体が硬くなっていて、筋肉をストレッチしても柔らかくならないことが考えられます。
筋肉が硬いと正常な動きができないので、関節に不自然なストレスがかかります。
不自然なストレスのせいで関節が損傷したり、摩擦が生じたりしたりしてしまいます。
その結果、関節を守ろうとして関節の組織が厚くなって硬くなるのです。
なので、関節が硬い人が筋肉をストレッチしても、体が柔らかくならないことがあります。
モーターコントロールも考慮する
モーターコントロールとは、運動の制御をする能力のことです。
体を動かす時は運動神経などを通して、脳から筋肉へ司令が伝わります。
この司令がうまくいかない人は、体をうまく動かすことができないので「モーターコントロールの機能障害がある」ということになります。
モーターコントロールが機能しないとうまく体を動かせず、本当は体が硬くないのに筋肉が緊張して筋肉が伸びなくなる可能性があります。
今までストレッチをして効果が得られなかった人も、ここまでお話した体の硬さの3要素を押さえていれば効果的なストレッチが行えるでしょう。
次からは実際にストレッチにどんな効果があるのかお伝えしていきます。
ストレッチの5つの効果
ストレッチは主に5つの効果があります。
もっとも有名なのは「体が柔らかくなる」ことですが、それ以外にも血流が良くなったりリラックスできたりと様々な効果が期待できます。
しかも、そのほとんどが研究でも確認されている効果なので、ストレッチは実際に効果があるものだといえるでしょう。
ここからは、その研究などを踏まえてストレッチの効果をお伝えしていきます。
体が柔らかくなる
ストレッチをすると筋肉の硬さがとれて、体が柔らかくなります。
筋肉は急に引き伸ばされて損傷しないように、受容器(筋紡錘とゴルジ腱器官)に守られています。
特に筋紡錘は筋肉が引き伸ばされると筋肉を縮める役割があるので、ストレッチをしていると筋紡錘の働きで筋肉が伸びなくなっています。
ところが、ストレッチで徐々に筋肉を伸ばしていると、筋紡錘のセンサー(閾値)が弱まって筋肉が伸びていきます。
このようにストレッチをして、筋肉の中にある受容器の働きを弱めることで体を柔らかくすることができるのです。
肩コリや腰痛が改善する
ストレッチでは肩コリや腰痛を改善することも可能です。
肩コリや腰痛は痛い部分をストレッチするだけでも痛みが軽減されます。
しかし、多くの場合は痛みの原因がその部分だけではなく、別の部分にあります。
例えば、腰痛は腰が原因というよりも、股関節に問題があることが多いです。
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が硬いと、骨盤が前に倒れてしまうので腰を反ってしまいます。
その結果、腰に負担がかかって腰痛になってしまうのです。
そのような人は腰をストレッチするのではなく、太ももの前の筋肉をストレッチすることで腰痛が解消されるでしょう。
このように、体の痛みの原因となる筋肉をストレッチすることで、肩コリや腰痛を改善することができます。
姿勢が良くなる
ストレッチで硬くなっている筋肉が柔らかくなれば、姿勢が改善されます。
もっともわかりやすいのが猫背です。
猫背は胸回り(大胸筋など)が硬くなっていることで肩が前に引っ張られ、背中が丸くなってしまうことで起きてしまいます。
そのため、胸の筋肉を伸ばしたり、背骨のストレッチをしたりすることで改善することができます。
このように、特定の筋肉が硬くなると姿勢が崩れるので、ストレッチをして筋肉を柔らかくすることで姿勢をよくすることができるのです。
血流が良くなる
ストレッチをすることで血流が良くなります。
なぜなら、ストレッチで反応性充血が起こるからです。
反応性充血は一時的に血流が制限されて血圧が上がり、その後血流が良くなる現象です。
ストレッチをすると血流が一時的に悪くなりますが、ストレッチ後に血液が一気に流れ込んで逆に血流がよくなるのです。
このことは、実際に研究でも確認されているので効果が高いといえるでしょう。
※詳しい研究内容は筋ストレッチの強度、時間変化による筋酸素動態の変化をタップしてください。
副交感神経が刺激されてリラックスできる
ストレッチは副交感神経(心臓迷走神経)が刺激されて、リラックス効果もあることが確認されています。
ストレッチをするとα波が増加して、副交感神経が刺激されます。
筋肉を伸ばしている最中は交感神経が優位になるものの、伸ばし終えると副交感神経が活発になるのです。
副交感神経が刺激されると血圧などが下がり、リラックスすることができます。
※ストレッチによる副交感神経の刺激は受動的静的ストレッチング中の自律神経活動の急激な変化で確認されました。
ストレッチで効果を最大限高めるポイント
ここまでストレッチの効果についてお話ししてきました。
ただ、ストレッチは単に伸ばすだけだと効果が薄いといえます。
もしかすると、今までストレッチをしても体が柔らかくならなかった人もいるかもしれません。
そのような人はモーターコントロールや体幹コアにもアプローチをする必要があるのです。
それぞれどのようなポイントなのかお話しするので、ストレッチをする前に確認しておきましょう。
体の硬さの原因を知る
ストレッチの効果を最大限に高めるために、まず体のアセスメント(評価)を行いましょう。
具体的には体のどこが硬いのか、本当に筋肉が硬いから体が硬いのかチェックを行います。
例えば、長座前屈でつま先を掴めても、立った状態ではつま先を掴めない人がいます。
一見すると、ももの裏の筋肉(ハムストリングス )が硬いから立った状態でつま先を掴めないと思いがちです。
そのため、ももの裏の筋肉を伸ばすストレッチを行うでしょう。
しかし、座った状態でつま先が掴めているのに、立った状態で掴めないのはありえません。
この人は、ももの裏の筋肉以外に原因があるから、立った状態でつま先を掴むことができないのです。
このようにアセスメントを行なってからストレッチをしないと、効果の出ないストレッチをしてしまう可能性があります。
ただし、アセスメントは一般の方では難しく、プロのトレーナーが見ないと正しく評価ができない可能性があります。
もし、難しいと感じるなら整骨院の先生がおすすめするアセスメントとストレッチ11選でご紹介するストレッチを上から順に全て行うことをおすすめします。
筋肉を伸ばす・揉む
アセスメントが終わったら、筋肉を伸ばしたり揉んだりすることをおすすめします。
アセスメントを行うとどこの筋肉が硬いのか確認できるので、どの筋肉を伸ばすべきなのかわかります。
まずは、硬いと感じた筋肉を伸ばすところから始めましょう。
筋肉を伸ばす時は、1つの部位につき20秒を目安とします。
筋肉を伸ばしても柔らかくならないと感じるなら、フォームローラーやテニスボールを利用して筋肉を揉んでからストレッチしてみましょう。
モーターコントロールにアプローチする
もし筋肉を伸ばしたり揉んだりしても柔らかくならない場合は、モーターコントロールに問題があります。
モーターコントロールの機能障害を改善しなければ、ストレッチを続けても体は柔らかくならないでしょう。
1ヶ月ほどストレッチを行なっても柔らかくならないなら、モーターコントロールにアプローチをする必要があります。
整骨院の先生がおすすめするアセスメントとストレッチ11選
ここからは、まず姿勢を評価する方法(アセスメント)をお伝えしていきます。
その結果に沿ってストレッチを11個ご紹介しますが、どのストレッチをすれば良いかわからない人は全てのストレッチ行うようにしましょう。
※本来であれば専門的なアセスメントを行うことでストレッチの効果を出すことが出来ます。専門的に指導をして欲しい方はこちらをクリックしてください。
体の硬さを確かめる(アセスメント)
どこの筋肉が硬くなっているか評価するには、専門的な知識が必要なので、ここでは姿勢を評価する方法をお伝えします。
まず、鏡の前に立って体を横にします。(スマホで写真を撮影するとわかりやすいです)
正常な姿勢は耳たぶから、外くるぶし(正確には外果全部2センチ)まで一直線であることです。
アセスメントをしてみて、姿勢が悪いと感じた人は姿勢を改善するストレッチを行うと、姿勢を改善することができます。
また、腰が反っている人は腰痛を改善するストレッチ、首が前に出て背中が丸まっている人は肩コリを改善するストレッチを行いましょう。
※自分でアセスメントをしてもよくわからない人は、姿勢を改善するストレッチから順に行なってください。
姿勢を改善するストレッチ
姿勢を改善するストレッチでは「ストレッチポール」を使います。
持っていなければヨガマットやバスタオルを丸めて、利用することをおすすめします。
種目 | 回数 |
床磨き運動 | 内回し、外回し10回ずつ |
肩甲骨上げ運動 | 10回 |
腕開き運動 | 10回 |
ワイパー運動 | 10回 |
膝緩め運動 | 10回 |
床磨き運動
- 手のひらを上に向けて床に円を描くように内回しで手を回す
- 手だけを回さずに肩から動かす
- 内回しが終わったら外回しも行う
肩甲骨上げ運動
- 両腕を天井に向ける
- 指先を天井に近づけるように肩甲骨を開いて、腕をストンを落とす
- これを繰り返す
腕開き運動
- 両腕を床を滑らせて広げていく
- 床を滑らせながら元に戻る
- これを繰り返す
ワイパー運動
- 両脚を腰幅に広げて膝を伸ばす。
- カカトを支点にして、つま先を外側と内側にワイパーのように動かす
- これを繰り返す
膝緩め運動
- つま先を外に向けて、カカトが動かないように膝を曲げる
- 同じくカカトが動かないように膝を伸ばす
- これを繰り返す
腰痛を改善するストレッチ4選
種目 | 回数や秒数 |
ももの前ストレッチ | 20秒 |
ブリュッツェル | 20秒 |
SLブリッジ | 10回 |
ヒップエクステンション | 10回 |
ももの前ストレッチ
- 壁に膝を近づけて、つま先を壁につける
- 片足を前に出して体を起こす
- 手を膝に置いてバランスをとる
ブリュッツェル
- 枕などを丸めて足を乗せる
- 下の足のつま先を掴む
- 体をひねる
- この体勢をキープする
SLブリッジ
- 仰向けになって片足を上げる
- もう片方の足でお尻を上げる
- これを繰り返す
ヒップエクステンション
- 四つ這いになる
- 膝を曲げたまま天井に向かって足を上げる
- 元に戻す
- これを繰り返す
肩コリを改善するストレッチ6選
種目 | 回数や秒数 |
首のストレッチ | 20秒 |
ラットストレッチ | 20秒 |
胸のストレッチ | 20秒 |
Tスパインエクステンション | 10回 |
スワンダイブ | 10回 |
チンニング | 20秒 |
首のストレッチ
- 座って胸を張る
- 頭を押さえて斜め前に首を曲げる
- 押さえている手で頭を引っ張る
- この体勢をキープする
ラットストレッチ
- 四つ這いになって椅子などの段差に手を置く(親指を上にする)
- 頭をさげて下に体重をかける
- この体勢をキープする
胸のストレッチ
- 壁などに手の平から肘までをつける
- 胸を張って前に体重をかける
- この体勢をキープする
Tスパインエクステンション
- フォームローラーを背中に置く(ない人は枕を丸める)
- 頭の後ろで手を組んで体を反る
- 限界までいったら元にもどる
- これを繰り返す
スワンダイブ
- うつ伏せになって肘を90°にする
- 顎を引いて体を起こす(肘が浮かない程度まで)
- 元に戻る
- これを繰り返す
チンニング
- 棒など掴まる(肩幅よりも手幅を広げる)
- 顎を引いてぶら下がる
- カカトをお尻側に曲げる
- この体勢をキープする
ストレッチをするときの注意点
ストレッチをするときはいくつか注意する点があります。
ここでお伝えする点を押さえていないとストレッチの効果が出ないばかりか、ケガをする可能性もあるので気をつけましょう。
呼吸を止めない
筋肉を伸ばしている間は、呼吸を止めないようにしましょう。
呼吸を止めると筋肉が緊張してしまって、筋肉が伸びにくくなってしまうからです。
大きく息を吸って、大きく息を吐くようにすると筋肉の緊張がとれて筋肉が伸びやすくなります。
少なくともいつも通りの呼吸を心がけましょう。
安定している場所で行う
ストレッチはベッドやソファではなく、床など安定している場所で行なってください。
ベッドで行うとリラックスができるから良いと言われることもありますが、体が沈み込んでしまうので伸ばしたい筋肉を適切に伸ばすことができません。
それこそ、モーターコントロールが悪い人はうまく体を動かすことができず、ストレッチの効果が薄れてしまうでしょう。
ストレッチは床で行うようにしてください。
痛気持ち良いところで止める
ストレッチをするときは無理に筋肉を伸ばさず、痛気持ち良いところで止めるようにしましょう。
柔らかくしたいからといって無理に筋肉を伸ばしても、筋紡錘の働きによって筋肉が強制的に縮むからです。
それでは筋肉が伸びないだけではなく、伸ばしすぎることによって肉離れなどのケガをする恐れもあります。
感覚的な話になりますが「少し痛いけど気持ち良い」と感じるところで止めるようにしてください。
まとめ
ストレッチは体を柔らかくするだけではなく、肩コリが改善したり血流がよくなったりと様々な効果があります。
しかし、体が硬いのは筋肉の硬さ以外にも、関節の構造やモーターコントロールの問題もあります。
そのため、闇雲にストレッチをするだけでは、体が柔らかくならないのです。
もし、あなたがこれからストレッチをするなら、ストレッチで効果を最大限高めるポイントを確認してから行いましょう。
そうすれば、効果的なストレッチが行えるはずです。
そして、もしポイントを見てもピンと来ないなら、整骨院の先生がおすすめするアセスメントとストレッチ11選でご紹介するストレッチを全て行うようにしましょう。